塗床工事を検討していると、必ずといっていいほど出てくるのが「エポキシ系」と「ウレタン系」という言葉です。どちらも広く使われている塗床材ですが、似ているようで性質も使い道もまったく異なります。見積もりの中に専門用語が並び、「違いがよくわからない」「どちらを選べばいいのか判断できない」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、エポキシとウレタンはそれぞれに強みと弱みがあり、使用する環境や目的によって向き不向きが分かれます。間違った選び方をすると、数年もたたずに剥がれたり、割れたりといったトラブルに発展することもあります。
この記事では、エポキシとウレタンの違いを「性能」「耐久性」「用途」などの切り口で丁寧に比較し、自社や現場に合った最適な塗床材を見つけるためのヒントをお届けします。
エポキシ塗床とは?硬度と美観重視の高性能素材
エポキシ系塗床は、その高い硬度と優れた美観性が特長の素材です。塗装後の仕上がりは光沢があり、清掃性にも優れているため、見た目と衛生面の両方が求められる現場に適しています。たとえば、食品工場や研究施設、医療機関のクリーンルーム、物流倉庫などでは、エポキシの性能が活かされる場面が多くあります。
その反面、エポキシはやや硬すぎるため、強い衝撃や建物の揺れによって割れが生じやすいという側面もあります。また、紫外線に弱く、直射日光があたる場所では変色や劣化が進みやすいため、屋外使用にはあまり向いていません。
さらに、温度変化や湿度の影響を受けやすく、施工時の気候条件に気をつけなければならない点も見逃せません。施工時には気温・湿度の管理が求められるため、熟練の業者による慎重な工程管理が必要です。
とはいえ、一定の条件をクリアできれば、エポキシ系塗床は耐摩耗性・耐薬品性ともに優れており、床面の強化・長寿命化に大きく貢献してくれる素材です。荷重がかかるフォークリフト走行路や、明るく清潔感が必要な食品工場の床面など、用途が明確で条件が整っている現場には非常に適した選択肢といえるでしょう。
ウレタン塗床とは?柔軟性と耐薬品性に優れた素材
ウレタン系塗床は、エポキシに比べてやや柔らかく、衝撃や伸縮に対して高い耐性を持つのが特徴です。コンクリートの微細な動きや温度変化に追従できるため、床にひびが入りにくく、結果として長持ちしやすいという利点があります。特に、水や薬品を使う作業が多い現場、温度の変動が激しい場所では、ウレタンの性能が重宝されます。
さらに、ウレタンは防水性にも優れており、水分が染み込むのを防ぐ構造になっています。そのため、厨房、食品加工場、浴室まわりなどの湿気が多い環境にも適しています。また、屋外でも使用可能な種類もあり、エポキシよりも汎用性が高いと言えるでしょう。
ただし、エポキシに比べるとやや柔らかいため、重機が頻繁に通る場所や強い摩耗が生じる環境では、耐久性に不安が残ることもあります。表面の光沢や仕上がりの美しさではエポキシに劣るため、見た目よりも実用性を優先する現場に向いている素材です。
最近では、ウレタン系塗床の中にも硬質タイプや厚膜タイプなど、条件に合わせて選べる製品も増えてきました。目的や使用環境に応じて、どのタイプのウレタンが適しているのかを見極めることが、失敗しない塗床選びのコツとなります。
コスト・耐久性・施工性を比較!3つの軸でプロが評価
エポキシとウレタンの違いを理解する上で欠かせないのが、「コスト」「耐久性」「施工性」という3つの視点です。それぞれの素材には長所と短所があり、すべての条件を一方が満たすわけではありません。まずコスト面では、一般的にエポキシ系の方が材料費は安価とされており、広範囲に施工する場合にはコストパフォーマンスに優れています。ただし、施工環境に制約があるため、管理に手間がかかるケースもあります。
一方、ウレタン系は材料費がやや高めである反面、施工の自由度が高く、さまざまな場所に対応できる柔軟さを備えています。防水性や防滑性など、特殊な機能を求める場合でも対応できることから、トータルで見ると費用対効果が高くなるケースも少なくありません。
耐久性については、静荷重に強いエポキシと、衝撃や温度変化に強いウレタンで求められる性能が異なります。荷重が一点集中するような場所ではエポキシが向いており、環境変化が大きい場所ではウレタンの方が適しているといえるでしょう。
また施工性においても違いがあります。エポキシは湿気に弱く、施工時の環境管理が難しいため、天候や気温に左右されやすいのが難点です。その一方、ウレタンは比較的温度や湿度の影響を受けにくく、屋外や風通しの悪い場所でも施工しやすいという利点があります。
このように、どちらの素材にも一長一短があるため、「どちらが上か」ではなく、「現場にどちらが合っているか」を見極めることが、失敗しない判断のカギとなります。
こんな現場にはこれ!選定に迷ったときの判断基準
塗床材を選ぶ際に迷ったときは、使用環境と求める性能から逆算するのが基本です。たとえば、フォークリフトや台車が頻繁に行き交う物流倉庫では、床の表面が傷みにくく、摩耗に強い素材が必要です。このような現場では、硬度が高く傷つきにくいエポキシ系が適しています。
一方で、厨房や食品工場など、水や油が常時使われる環境では、防滑性や防水性、薬品への耐性が求められます。こうした場所には、柔軟性と耐薬品性に優れたウレタン系が有効です。特に、床にひび割れが起きやすい場所では、柔軟性のある塗床材で床の動きに追従させる必要があります。
また、温度変化が激しい冷蔵庫まわりや、屋外通路、ベランダなどの半屋外スペースでは、ウレタンの施工性の高さが役立ちます。施工期間や養生時間に余裕がない場合も、ウレタンの硬化スピードや扱いやすさが選定の決め手となることがあります。
塗床材の選定に失敗すると、施工直後は問題なくても、半年後、一年後に剥がれや浮きといったトラブルが発生しやすくなります。そうしたリスクを回避するためにも、現場の使用条件をしっかりと把握し、それに合った素材を提案できる業者をパートナーに選ぶことが重要です。
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プロの施工で差が出る!塗床材選定と施工一貫対応の価値
塗床の仕上がりは、素材の選び方だけでなく、誰が施工するかによっても大きく変わります。どれほど良質なエポキシやウレタンを使っても、下地処理や塗布工程が適切でなければ、その性能を発揮することはできません。塗床工事は見た目以上に技術と経験を要する専門分野であり、施工会社の力量が問われる仕事です。
とくに、複数の素材から最適なものを選び、現場ごとに最適な施工方法を提案できる業者は、ほんの一握りです。塗床に関する正しい知識と実績を持つ会社に依頼することが、長持ちする床づくりの第一歩となります。
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