工場や倉庫の床がツルツルしていたり、どこか独特の質感を感じたことはありませんか?それは「塗床(ぬりゆか)」という施工が施されているからです。見た目は塗装と似ていますが、実はまったくの別物。床塗装が色をつけるだけの仕上げにとどまるのに対し、塗床は床面そのものの機能性を高めるための施工です。滑りにくくしたり、薬品や衝撃に強くしたりと、目的によって使われる材料や工法も変わります。
ただ、「塗床ってどんな素材でできてるの?」「そもそもどんな場所に使われているの?」と、詳しく知っている方はまだ少ないかもしれません。実際には、食品工場からガレージ、駐車場まで幅広く活用されており、それぞれに合った施工が行われています。
本記事では、「塗床とは何か?」という基本から、その目的、使われる素材、施工の流れ、業者選びのコツまで、わかりやすく丁寧にお伝えしていきます。
塗床の目的と役割とは?工場や駐車場で使われる理由
塗床が行われる一番の目的は、床を「使える状態」に保つことです。たとえば工場では、重機や台車が毎日行き交い、床面には相当な負荷がかかります。そのままでは割れや欠け、粉じんの発生といった問題が起こりやすく、安全性にも衛生面にも支障が出てしまいます。そこで、床に特殊な素材を塗り重ねることで、摩耗や衝撃、薬品への耐性を備えさせるのが塗床の役割です。
特に食品工場や医薬品工場では、床にひびが入ると異物混入や細菌の温床となる恐れがあるため、密閉性や清掃性に優れた塗床が必須とされています。また、自動車整備工場では、オイルや薬品の付着による滑りや腐食を防ぐ必要があるため、耐油性や耐薬品性を備えた施工が求められます。駐車場やガレージでも、車の走行やブレーキによる摩耗に耐えうるよう、硬度やグリップ性を重視した塗床が使われます。
さらに最近では、見た目の美しさやカラー分けによる導線表示など、デザイン性の面でも塗床の役割は拡大しています。衛生管理、作業効率、安全確保、そして意匠性。そのすべてに応えるのが、塗床という施工なのです。
どんな場所に塗床が使われる?代表的な施工現場を紹介
塗床は、さまざまな現場で必要とされていますが、その使われ方は環境や業種によって少しずつ異なります。もっともよく見られるのは、食品工場や飲料工場といった衛生管理が重要視される施設です。これらの現場では、床の凹凸やひび割れに汚れがたまると、カビや雑菌の原因となってしまいます。そのため、表面が滑らかで、汚れを落としやすい塗床が重宝されているのです。
一方、自動車整備工場や製造工場などでは、重機や工具の落下に耐える強度、タイヤの摩擦に負けない耐久性、油や薬品にも侵されない耐性が求められます。こうした現場では、エポキシ系やウレタン系の塗床材が適しており、現場の使用条件に応じて選定されます。
また、駐車場やガレージといった屋外・半屋外の空間では、防滑性や防水性が大きなポイントになります。雨水が入りやすく、車の出入りも頻繁な場所では、床が滑りにくく、水によって傷みにくい構造が必要です。その点でも、塗床は機能的かつメンテナンス性の高い仕上げとして多く選ばれています。
このように、塗床は単に「塗るだけ」のものではなく、それぞれの環境や用途に応じて素材や工法が工夫されており、適切な施工がなされてこそ真価を発揮します。
塗床材の種類とは?それぞれの特徴と選び方
塗床に使われる材料は、用途や環境に応じていくつかの種類に分かれます。中でも代表的なのが「エポキシ樹脂」と「ウレタン樹脂」の2つです。それぞれに強みがあるため、現場ごとの条件にあわせて適切に選ぶことが重要です。
まず、エポキシ系は硬度が高く、傷がつきにくいのが大きな特徴です。重機が頻繁に通る場所や、床面に高い耐久性が求められる製造工場などで多く使われています。また、光沢のある美しい仕上がりになりやすいため、見た目を重視したい場所にも適しています。一方で、紫外線に弱く、屋外や直射日光が当たる場所には向かないという弱点があります。
それに対してウレタン系は、柔軟性があり、多少の伸縮や衝撃にも耐える性質を持っています。たとえば食品工場のように温度差が大きく、水や薬品が頻繁に使われる場所では、ウレタンの方が適しているケースが多いです。加えて、ウレタンは防水性にも優れており、駐車場や屋外通路などにもよく採用されます。
このほか、特殊な用途ではアクリル系や無機系の塗床材も使われることがあります。たとえば短工期が求められる現場では、硬化が早いアクリル系が有効です。
素材を選ぶ際には、「その場所でどんな作業が行われるか」「床にどんな負荷がかかるか」「水や油は使われるか」などを事前にしっかり確認することが欠かせません。最適な素材を選定することが、長持ちする床づくりの第一歩です。
塗床の施工工程と注意点:失敗しないための基本知識
塗床は、ただ材料を塗り広げれば完成するような簡単な作業ではありません。むしろ仕上がりの良し悪しを大きく左右するのは、施工前の下地処理や、現場ごとの条件を見極める力にあります。たとえば、既存の床にヒビや油汚れが残ったまま塗料をのせてしまうと、密着不良や剥がれの原因になります。しっかりとした下地処理を行い、必要に応じて研磨や洗浄を丁寧に施すことが、塗床の基本です。
次に重要なのが、気温や湿度の管理です。塗床材は気候に大きく影響を受けるため、適した時期や時間帯を見極めながら作業を進める必要があります。特に梅雨や真冬など、湿気や気温の変化が激しい時期は施工ミスが起きやすく、計画段階から綿密な準備が求められます。
さらに、施工後の硬化時間にも注意が必要です。表面は数時間で乾いたように見えても、内部までしっかり固まるまでには一定の時間がかかります。この工程を軽視して荷重をかけてしまうと、せっかくの塗床が台無しになってしまうこともあります。
こうした注意点をひとつひとつ丁寧に押さえながら、現場に合った最善の方法で施工を進めてくれるのが、経験豊富な専門業者の存在です。たとえば【株式会社AIM】のように、下地処理から仕上げ、アフターケアまで一貫して対応できる業者であれば、安心して施工を任せることができます。
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自社に合った塗床工事の見極め方とは?
塗床は、見た目の美しさだけでなく、作業環境の安全性や衛生管理にも直結する重要な施工です。どれだけ高性能な材料を使っても、使い方や環境に合っていなければ意味がありません。だからこそ、「どんな目的で使う床なのか」「何に対して強くしたいのか」といった視点から、自社の課題に寄り添った施工を選ぶことが欠かせません。
また、施工後すぐは問題がなくても、半年、1年と経つうちに剥がれや浮きが生じるケースもあります。そうしたトラブルを防ぐには、事前の診断や適切なアドバイスができる業者に相談することが大切です。業者選びは、価格だけで判断するのではなく、現場に即した提案力と、細かな説明を怠らない姿勢にも注目すべきでしょう。
塗床は「仕上げ」ではなく、「現場の土台づくり」です。長く安心して使える環境を整えるために、自社にとって本当に必要な塗床とは何かを、今一度見直してみてはいかがでしょうか。
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