「安い」だけで塗床業者を選ぶと9割が失敗する理由|プロが教える相見積もりのコツ

工場の床の塗り替えを検討し、いくつかの業者から相見積もりを取った。提示された金額には大きな差があり、何を基準に選べばいいか分からない。結局、一番安い見積もりを出してくれた業者に依頼したものの、1年も経たないうちに床のあちこちが剥がれてきてしまった…。


これは、塗床の業者選びで非常によくある失敗談です。


多くの人にとって、塗床工事は頻繁に行うものではありません。だからこそ、いざ業者を探す段になると、「どこに頼めばいいのか」「何を比較すればいいのか」が分からず、つい目先の「価格」という分かりやすい指標だけで判断してしまいがちです。


しかし、その安易な選択が、結果的に「安物買いの銭失い」となり、再工事のための余計な費用と、事業を止めるという大きな損失につながる可能性があります。


塗床の業者選びは、単なる作業の発注ではありません。工場の生産性、店舗の安全性、建物の資産価値そのものを左右する、極めて重要な「経営判断」です。この記事では、あなたが後悔しない業者選びをするために、価格の裏に隠された本質を見抜くための具体的な視点と知識をお伝えします。




■ どこに頼める?塗床業者の種類とそれぞれのメリット・デメリット

塗床工事を依頼できる業者には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を知ることで、あなたの目的に最も合った依頼先を見極めることができます。



・塗床専門業者

塗床工事を専門に手掛けている、いわば床のプロフェッショナルです。最大のメリットは、その高い専門性と技術力です。床の状態を正確に診断し、多種多様な塗料や工法の中から最適なものを提案してくれます。下請けを挟まない直接施工が多いため、中間マージンが発生せず、高品質な工事を適正価格で実現できる可能性が高いのも魅力です。デメリットは、塗装以外のリフォームなどには対応できない場合があることです。



・リフォーム会社

内外装を含め、幅広いリフォーム工事を請け負う会社です。メリットは、床だけでなく壁や天井など、建物全体のリフォームをまとめて依頼できる利便性の高さです。ただし、リフォーム会社が直接施工するケースは少なく、多くは下請けの塗装業者に発注します。そのため、中間マージンが発生し費用が割高になる傾向があります。また、担当者に塗床の専門知識が乏しい場合、適切な提案が受けられない可能性もデメリットと言えます。



・工務店

新築や増改築などを手掛ける地域の工務店でも、塗床工事を依頼できる場合があります。普段から付き合いのある工務店であれば、気軽に相談できるのがメリットです。しかし、リフォーム会社と同様に下請け業者に発注することがほとんどで、専門性は期待できないケースが多いでしょう。


結論として、塗床は非常に専門性が高い工事分野です。もしあなたが、品質とコストパフォーマンスを最も重視するのであれば、直接「塗床専門業者」に相談するのが最も確実で賢い選択と言えます。




■ 見積書のココを見ろ!価格差の理由と優良業者だけが書いている重要項目

複数の業者から相見積もりを取ると、その価格差に驚くかもしれません。「なぜ、こんなに金額が違うのか?」その最大の理由は、工事の品質、特に「下地処理」という工程に対する考え方の違いにあります。


下地処理とは、塗装の前に、既存の床の汚れや古い塗膜を剥がし、コンクリート表面を整える作業のことです。この工程が、塗床の耐久性を9割決めると言っても過言ではありません。


優良な業者の見積書には、この下地処理の内容が具体的に記載されています。例えば、「ケレン作業」や「研磨機による目荒らし」といった項目があれば、古い塗膜を物理的に剥がし、塗料の密着性を高めようとしていることが分かります。また、「プライマー塗布」という記載は、下地と上塗り塗料を接着させるための重要な工程を示しています。


一方で、価格が極端に安い業者の見積書は、「塗床工事一式」といった大雑把な記載になっていることがあります。これは、手間のかかる下地処理を簡略化している可能性が高いサインです。高圧洗浄だけで済ませてしまったり、プライマーを塗らなかったりすれば、当然コストは下がりますが、塗料はすぐに剥がれてしまいます。


見積書を比較する際は、単に総額の安さを見るのではなく、「下地処理」に関する項目がどれだけ詳細に、そして誠実に記載されているかを確認してください。その部分こそが、業者の品質に対する姿勢そのものを表しているのです。




■ 絶対に避けたい!悪質な塗床業者に共通する3つの危険なサイン


残念ながら、塗床業界にも知識や経験の浅い業者や、利益優先の不誠実な業者が存在します。大切な資産を守るため、以下に挙げる「危険なサイン」を見抜く目を養いましょう。一つでも当てはまる場合は、契約を慎重に考えるべきです。



・①現地調査をせず、平米数だけで見積もりを出す

電話やメールで「広さは〇〇平米です」と伝えただけで、詳細な見積もりを出してくる業者は危険です。プロであれば、床の現在の材質、劣化の度合い、ひび割れの有無、油汚れの状態などを実際に目で見て、手で触れて確認しなければ、最適な工法や正確な費用を算出できるはずがありません。現地調査を省略するのは、工事の品質を軽視している証拠と言えます。



・②「今すぐ契約すれば安くします」と契約を急かす

「キャンペーン期間なので本日中に契約すれば〇〇円引きです」「足場が近くにあるので、今決めてくれれば特別価格で」といった言葉で契約を急かしたり、過度な値引きを提示したりする業者には注意が必要です。これは、他社と比較検討されると都合が悪い、自信のなさの表れかもしれません。優良な業者は自社の技術力に自信があるため、顧客がじっくり考える時間を尊重します。



・③自社の施工事例や実績を見せようとしない

「御社と同じような工場での施工事例を見せてください」と依頼した際に、写真や具体的な説明を渋る、あるいは見せようとしない業者は、実績が乏しい可能性があります。特に、ホームページに掲載されている写真が、メーカーのカタログ写真ばかりで、自社で施工した写真がほとんどない場合も注意が必要です。実績は、その業者の経験と信頼性を測る最も分かりやすい指標です。




■ 最終確認!信頼できるパートナー業者を選ぶための7つのチェックリスト


これまでの情報を基に、最終的に信頼できるパートナー業者を選ぶための具体的なチェックリストを作成しました。業者と話す際や、見積もりを比較する際に、ぜひこの7つの項目を確認してください。



塗床工事の専門家か?

総合リフォームではなく、塗床工事を事業の柱としている専門業者かを確認しましょう。



下地処理から一貫して自社で施工しているか?

下請けに丸投げせず、品質管理の責任を明確にするために、自社の職人が施工する体制かを確認します。



こちらの要望に対し、複数の工法を提案してくれるか?

一つの工法を押し付けるのではなく、予算や用途に応じて複数の選択肢を示してくれる提案力があるかを見極めます。



見積書の内訳が詳細で分かりやすいか?

「一式」ではなく、「下地処理」「中塗り」「上塗り」など、工程ごとの単価や内容が明記されているかを確認します。



類似施設の施工実績は豊富か?

あなたの施設(工場、厨房、店舗など)と似た環境での施工実績が十分にあるか、具体的な事例を見せてもらいましょう。



担当者の説明は丁寧で、質問に的確に答えられるか?

専門的な内容も分かりやすく説明し、こちらの疑問や不安に真摯に答えてくれるか、コミュニケーションの質も重要です。



アフターフォローや保証体制は整っているか?

工事後の保証期間や、万が一不具合があった場合の対応について、書面で明確に示してくれるかを確認しましょう。


特に、床の傷みが激しい場合は、表面的な塗り替えだけでなく、コンクリートの状態を診断し、根本的な改修まで提案できるような、より高度な技術力を持つ業者を選ぶことが長期的な安心に繋がります。


専門業者の事業案内ページなどで、どのような工事まで対応可能かを確認してみるのも良いでしょう。




■ まとめ:良い業者選びは、未来への賢い投資である


塗床の業者選びで失敗しないためのポイントを、具体的なチェックリストと共に解説してきました。


相見積もりを取って価格を比較することは大切ですが、その数字の裏にある「品質」や「誠実さ」を見抜く視点を持つことが、それ以上に重要です。安いという理由だけで選んだ業者のせいで、結局は高くついてしまった、という後悔だけは決してしてはいけません。


良い業者を選ぶことは、単なる工事の発注ではありません。あなたの会社の生産性、従業員の安全性、そして大切な建物の資産価値を守るための「未来への賢い投資」です。


今回ご紹介したチェックリストを参考に、ぜひ2〜3社の専門業者に相談し、その対応や提案内容をじっくり比較検討してみてください。焦らず、納得できるまで話を聞くことが、最高のパートナーを見つけるための最も確実な道です。


どこに相談すればいいか迷ったら、まずは問い合わせフォームから、専門家の意見を聞いてみることから始めてみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの抱える床の悩みを解決する糸口が見つかるはずです。