「工場の床、塗装が剥がれて困ってる?」原因と対処法を現場視点で解説

New

せっかく塗装した工場の床が、わずか数ヶ月で剥がれてしまう――このようなトラブルは、決して珍しくありません。見た目には問題がなさそうでも、実際には塗膜が浮いてきたり、端からめくれてきたりと、使い勝手に大きな支障が出てきます。


こうした剥がれの原因は、ほとんどが「施工前の処理不足」または「使用環境に合わない材料選定」にあります。床面に油分が残っていたり、コンクリートが十分に乾燥していなかったりすると、どれだけ良い塗料を使っても密着性が確保されず、時間の経過とともに浮きや剥がれが発生します。


また、使用されている機械やフォークリフトなどによる荷重、温度変化、水・薬品の影響など、過酷な条件に耐えられる設計になっていなければ、塗膜の劣化は避けられません。見た目重視で施工した結果、現場の実態に耐えきれなかったという例も少なくないのです。




この床、そもそも塗装に向いてる?

床の剥がれが起きるかどうかは、使っている塗料だけの問題ではありません。実際には、床そのものが「塗装に適しているかどうか」という点が非常に重要です。コンクリートの質、含水率、過去の施工履歴、日常の使われ方――それぞれが密接に関わってきます。


たとえば、長年使われて粉を吹いているような古いコンクリートは、表面が劣化しており、塗料の密着性が極端に落ちます。このような床にそのまま塗装しても、早ければ数日〜数週間で浮きやひび割れが生じてしまいます。さらに、過去に別の塗装がされていた場合、その塗膜が劣化していると新しい塗料の密着を妨げることもあります。


また、床に染みこんだ油や薬品が原因で、塗料が弾かれるケースもあります。目には見えなくても、内部に油分が浸透していると、表面をどれだけ洗っても完全に除去できず、密着不良につながるのです。現場で「きちんと掃除したはずなのに剥がれた」という場合、こうした見えない要因が隠れていることが多いです。


さらに、気温や湿度といった環境条件も見逃せません。コンクリートの含水率が高い状態では塗装に適しませんが、冬場や梅雨時期などは表面が乾いて見えても内部に水分が残っていることがよくあります。これを見抜けないまま塗装してしまうと、塗膜内部に気泡が発生し、結果として剥がれの原因になります。


床塗装が長持ちするかどうかは、「塗るべきかどうか」を正しく判断できるかにかかっています。工場の現場に合った材料と施工方法を選べるかどうかが、失敗を避ける最大の分かれ目になります。




「塗り直し」で済むケースと、そうでないケース

塗装が剥がれてしまったとき、多くの現場ではまず「もう一度塗り直せばなんとかなるのでは」と考えます。確かに、軽度の浮きや一部の剥がれであれば、部分的な補修や再塗装で対応できることもあります。ただし、現場の状況によっては、それでは根本解決にならないケースもあるのが実情です。


たとえば、表面の剥がれが広範囲に広がっていたり、下地のコンクリートそのものに傷みがある場合は、単なる再塗装では再発リスクが高まります。塗料が密着するための基盤が崩れていれば、何度重ねてもすぐにまた浮いてくるだけです。下地補修を行わずに再塗装しても、費用ばかりかさんで仕上がりに満足できないことも多いのです。


また、過去の施工で不適切な塗料が使われていた場合、新しい塗料と相性が悪く密着しないこともあります。このような場合、古い塗膜をすべて剥離してから再塗装を行う必要があり、作業の手間もコストも大きくなります。安易な「重ね塗り」はかえって施工不良の温床になりかねません。


さらに、塗装がはがれた原因が床の使用環境にある場合、根本的な改善をしなければ再発は避けられません。たとえば、油が常にこぼれる場所で吸水性の高い床材を使っていた場合、いくら再塗装しても状況は変わらないでしょう。そもそも塗装ではなく、シート張りやタイル張りといった別の施工法の方が適しているケースもあります。


塗り直す前に確認すべきことは、「なぜ剥がれたのか」を正確に把握すること。そして、再発を防ぐにはどこまで手を入れる必要があるのか、長い目で見て判断することです。施工内容を間違えなければ、塗装は十分に耐久性のある工法ですが、「適切な手順を踏む」ことが何より重要です。




もう剥がさない!再塗装で気をつけること

再塗装をする際、最も重要なのは「剥がれた原因を取り除くこと」です。表面だけを整えても、根本の原因が解決されていなければ、数ヶ月以内に再び同じトラブルが起きる可能性が高くなります。特に注意が必要なのは下地処理と塗料選びです。


まず、下地処理では、既存の塗膜をどの程度剥がすべきかを正しく見極めなければなりません。部分的に浮いている塗膜だけでなく、周囲にも微細な浮きが広がっていることがあり、見た目だけで判断すると失敗につながります。ケレン作業(塗膜の削り落とし)や高圧洗浄、油分除去といった工程を丁寧に行うことで、塗料の密着性は大きく変わります。


塗料の選定も、再発防止には欠かせません。たとえば、強い密着力を持ちつつ耐薬品性に優れたウレタン系塗料は、厨房や工場のような環境に適しています。塗膜の厚みや柔軟性も重要で、温度変化や衝撃に耐えられる仕様かどうかを確認しておくと安心です。


また、施工時の気温や湿度にも配慮が必要です。夏場の高温多湿や、冬場の乾燥といった気候条件によって、塗料の乾燥・硬化に影響が出ることがあります。こうした点を踏まえて、施工タイミングを見極めるのもプロの判断が求められる部分です。


「再塗装だから簡単」という考えでは、また同じ失敗を繰り返すことになります。現場の条件を正確に把握し、必要な工程を一つずつ丁寧に積み重ねていくこと。それが、長持ちする床づくりの鍵です。

▶︎ 施工の流れ・ご案内はこちら




現場の工夫にヒントあり!再剥離を防ぐ施工例

実際の現場では、塗装の剥がれに悩まされたあと、的確な対策を講じることでトラブルが解消された例も多くあります。ある食品工場では、床全面に過去の塗膜が残っており、油染みも激しい状態でした。この現場では、まず全体を研磨して古い塗膜を完全に除去。次に油分除去剤で洗浄し、吸水性の高い下地に適したプライマーを使用してから、耐油性に優れた塗料で仕上げました。その結果、1年経っても剥がれは見られず、日々の清掃も楽になったとのことです。


また、別のケースでは、常に水がかかるエリアで塗装がはがれていたため、排水の見直しと合わせて床材を変更。塗装にこだわらず、防滑性と防水性を兼ね備えた樹脂モルタル仕上げに切り替えることで、再発を防ぐことができました。このように、「塗り直す」ことに固執せず、床の使われ方に合わせて工法そのものを変える判断も有効です。


他にも、フォークリフトが通る導線だけを強化塗装にする、エリアごとに異なる素材を使い分けるといった工夫をしている現場もあります。現場の用途や負荷を冷静に分析し、「最も傷みやすい場所から守る」設計をすることで、塗装の寿命は大きく延びます。


成功事例の共通点は、「現場の状況に合わせて柔軟に設計されていること」です。マニュアル通りの施工ではなく、実際にどんな使い方がされているのかを踏まえて判断し、材料や工程を最適化している点が、剥がれの再発防止につながっています。




塗る前に、現場の使い方をもう一度見直そう

塗装の剥がれは、「塗り方が悪かった」だけでは説明できないことが多くあります。むしろ、本当の原因は「床の使い方と施工内容が合っていなかった」ことにある場合がほとんどです。だからこそ、ただ塗り直すのではなく、まずは現場の運用を冷静に見直すことが重要です。


荷物の重量、通行頻度、液体の飛散、清掃方法。こうした日々の運用こそが、床の耐久性を左右する要素です。見た目の美しさや塗料の性能に注目するだけでなく、「この床はどう使われているのか」を丁寧に振り返ることが、長持ちする工事につながります。


ときには塗装ではなく、他の床材を選ぶべき場合もありますし、根本から動線や排水を見直す必要があることもあります。現場の問題点を洗い出し、将来の使い方も見据えて施工を計画することが、失敗しない一番の近道です。


焦らずに、まずは正確な状況把握から始めてみる。それが塗装の再発防止につながり、結果的にコストや手間の削減にもなります。


塗り直しを検討している方も、「今、本当に必要な対応は何か」を一緒に整理してみてはいかがでしょうか。

▶︎ お問い合わせはこちら