「工場の床、DIYで塗装できる?」失敗しやすいポイントと成功の条件

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「できるだけ費用を抑えたい」「休みの日にやれば工場の稼働にも影響しない」――そう考えて、床塗装を自分でやってみようかと検討する方は意外と多くいます。塗料や道具もホームセンターやネットで手に入る時代、やろうと思えばすぐに取りかかれそうに思えるかもしれません。


ですが、実際の現場では、DIYで塗装をしたもののすぐに剥がれたり、塗りムラが目立って結局やり直しになった、というケースが少なくありません。工場の床は日常的に重機が通ったり、油や薬品がこぼれたりと、一般家庭の塗装とはまったく異なる環境にあります。


「やってみたい」という気持ちは大切ですが、その前にまず知っておきたいのは、「自分で塗装できる床と、そうでない床がある」という現実です。やり方だけでなく、「やっても大丈夫か」の見極めこそが、最初の重要な判断ポイントになります。




あなたの工場の床、DIYに向いてますか?

床の状態によって、DIY塗装が現実的かどうかは大きく変わります。たとえば、コンクリートが新しいか古いか、表面が乾燥しているか油分がしみこんでいるか、これだけでも塗料の密着性はまったく違ってきます。表面だけを見て「塗れそう」と判断するのは、少し危険です。


特に注意したいのが、過去に塗装された履歴がある場合。古い塗膜が残っていると、その上から塗ってもすぐに剥がれる可能性があります。また、床面が粉を吹いていたり、水分が多く含まれていたりすると、いくら良い塗料を使っても定着せず、施工後すぐに浮いてくることもあります。


また、フォークリフトや重量物の通行が多い床は、塗膜にかかる負荷が大きくなります。このような場所では、単に「塗る」だけでは十分とは言えません。表面を機械で研磨したうえで、専用の下地処理材を使うなど、しっかりした施工が必要になります。


DIYが可能かどうかを判断するには、まず「床の下地がどんな状態か」を正確に把握すること。そのうえで、塗装の目的(見た目の改善か、耐久性重視か)を明確にすることが大切です。無理にDIYにこだわると、思った以上に手間とコストがかさむ場合もあるため、冷静な判断が求められます。




実は大仕事?DIY塗装の流れを解説

DIYで工場の床を塗る場合、最初にぶつかるのが「何から始めればいいのか分からない」という壁です。実際には、塗料を塗る前の「下準備」に大半の時間と労力がかかります。


まずは、床の表面を清掃し、ホコリやゴミ、油分を徹底的に除去します。業務用洗剤を使ってブラシでこすり、水拭きと乾拭きを繰り返したうえで、最低でも丸1日はしっかり乾燥させる必要があります。水分が残ったまま塗装すると、剥がれや膨れの原因になります。


次に、必要に応じてサンダーなどで表面を研磨し、ひび割れや段差がある部分はパテや下地材で補修します。この作業を省略すると、塗料が均一にのらず、ムラや気泡が発生しやすくなります。その後、プライマー(接着剤の役割をする下地用塗料)を塗布し、乾燥時間を厳守したうえで、ようやく本塗りに進みます。


本塗りは、ローラーや刷毛を使って均一に塗り広げていきますが、気温や湿度によって乾燥時間が変わるため、施工時期も重要です。さらに、1回塗りでは耐久性が不足するため、2〜3回の重ね塗りが必要になることもあります。


DIY塗装は、見た目よりもずっと体力と時間を要する作業です。限られた休日や営業時間外に無理して進めようとすると、結果として中途半端な仕上がりになり、かえって早期の再施工が必要になることもあります。




よく聞く「剥がれた」「ムラになった」原因は?

DIYで床を塗装した後、「最初はきれいだったけど、1ヶ月も経たずに剥がれてきた」「乾いたと思って歩いたら靴跡がついた」という声は珍しくありません。これらのトラブルの多くは、下地処理や乾燥時間を甘く見たことに起因しています。


たとえば、表面にわずかでも油分が残っていれば、塗料はきちんと密着しません。完全に乾いたように見えても、内部に湿気が残っていると、施工後に塗膜が浮いてきたり、気泡が出たりすることもあります。また、ひび割れや段差があるのに無視して塗装を進めると、その部分から剥がれが広がりやすくなります。


もう一つの落とし穴が「乾燥時間の読み違い」です。特に湿度が高い日や気温が低い季節では、塗料が固まるまでに通常より時間がかかります。乾いているように見えても、内部が完全に硬化していないまま歩くと、塗膜が傷ついたり、跡が残ってしまうのです。


加えて、使用する道具や塗装の手順にも失敗の要因はあります。たとえば、ローラーの毛足が合っていないと塗料を吸いすぎたり、ムラが出たりします。塗る順番や塗り重ねのタイミングがずれると、色味の差が出ることもあるため、丁寧に計画を立てる必要があります。


DIY塗装で失敗を避けるには、施工手順を正しく守ることが絶対条件です。ただ「塗ればいい」では済まないのが工場の床。だからこそ、作業前に正しい知識を持ち、自分のスキルと設備で本当に対応できるかを冷静に見極めることが大切です。




どっちが得か?DIYとプロ施工のリアルな比較

DIYで床塗装を行う最大のメリットは、やはり費用を抑えられる点にあります。業者に依頼すると数十万円かかる工事も、自分でやれば塗料代と道具代だけで済む場合もあるため、コスト面では非常に魅力的です。ただし、その分すべての工程を自力でこなす必要があり、時間と体力をかなり消耗します。


一方で、プロに依頼した場合は、下地処理から塗装、乾燥管理まで一貫して対応してくれるため、品質の安定性は高くなります。特に「長持ちすること」「営業に支障を出さないこと」を重視するなら、初期費用が高くても結果的には安心感があります。また、保証がつく業者も多く、施工後に不具合が出た場合の対応も明確です。


仕上がりの差も無視できません。DIYではどうしても塗りムラが出たり、細かい部分がうまく塗れなかったりといったことが起こりやすく、見た目の美しさや耐久性に影響することも。工場の床は日々過酷な環境にさらされるため、少しの手抜きが大きなトラブルにつながることもあります。


時間の制約も大きな要素です。DIYでは複数日にわけて作業することになりますが、プロに任せれば短期間で一気に仕上げることができ、工場の稼働にも影響が出にくくなります。休日や連休に集中して作業するつもりが、乾燥が間に合わず稼働再開に支障が出た、というケースもあるため注意が必要です。


「自分でやったほうがいいのか、業者に頼むべきか」。判断に迷ったら、まずはそれぞれのメリット・デメリットを整理して、自分たちの現場にとって何が最適かを考えてみることが大切です。

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「やる前に、床の状態をチェックする」それが成否の分かれ道

DIY塗装を成功させるかどうかは、最初の「見極め」にかかっています。床の劣化が軽度で、汚れや湿気のコントロールができるなら、自分で塗装を試みるのもひとつの方法です。ただし、現場によっては表面の傷みが予想以上に深刻で、塗装よりも先に下地の補修が必要な場合もあります。


重要なのは、「やることが目的」になってしまわないこと。DIYでの塗装は、知識・技術・手間が必要な作業です。思いつきで始めると、かえってコストがかさみ、業務にも支障が出るリスクがあります。「本当に自分たちで対応できるか」「費用対効果は見合っているか」を、事前に冷静に見極める姿勢が欠かせません。


また、使う塗料や道具によっても仕上がりは大きく左右されます。情報だけを頼りに選ぶのではなく、なるべく現場の状況に詳しい専門家の意見を参考にすることをおすすめします。自分で対応するにせよ、プロに頼むにせよ、重要なのは「納得したうえで判断すること」です。


塗る前に一度立ち止まり、自分たちの床に何が必要なのかを見直すこと。それが失敗を防ぎ、長持ちする床づくりの第一歩になるはずです。


もし判断に迷ったときは、相談だけでもしてみると、思いがけずヒントが得られるかもしれません。

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