薬品を扱う工場で床を改修するとき、「耐薬品性のある塗床なら何を選んでも大丈夫」と考えてしまうと、施工後に変色や軟化、剥がれが起きることがあります。
耐薬品塗床は、すべての薬品に同じように耐えられる床ではありません。酸・アルカリ・有機溶剤など薬品の種類だけでなく、濃度や温度、床に触れている時間によっても適した材料は変わります。
この記事では、薬品を使用する工場で塗床を選ぶときに確認したいポイントと、エポキシ樹脂、水性硬質ウレタン、ビニルエステルなどの違いを解説します。
工場の床に耐薬品性が必要な理由

製造工場や食品工場、研究施設などでは、作業中や洗浄時に薬品が床へ付着することがあります。
そのまま放置すると、塗膜だけでなく下地のコンクリートまで傷む可能性があります。まずはどのようなトラブルが起こるのかを把握しておきましょう。
塗膜が変色する
薬品が塗床に触れることで、表面の色が変わることがあります。
見た目だけの変化で済む場合もありますが、変色と一緒に塗膜の軟化や膨れが起きている場合は注意が必要です。
薬品を日常的に使用する場所では、現在使っている薬品に対して床材が対応しているかを確認します。
塗膜が軟化する
床材と相性の悪い薬品が接触すると、硬かった塗膜が柔らかくなることがあります。
その状態で人や台車、フォークリフトが通れば、表面が傷んだり剥がれたりする原因になります。
エービーシー商会も、酸・アルカリ・溶剤は種類や濃度、接触期間によって塗膜の軟化や変色などが生じる場合があるとしています。
参照URL:エービーシー商会「塗り床の正しい選び方と使い方」
膨れや剥がれにつながる
薬品によって塗膜が傷むと、表面だけではなく塗床自体が膨れたり、下地から剥がれたりすることがあります。
一度剥がれた場所に薬品や水が入り込めば、周囲まで傷みが広がる可能性があります。
床に薬品がこぼれることが分かっているのであれば、施工前から耐薬品性を含めて仕様を決めておくことが重要です。
コンクリートまで傷むことがある
塗床には、見た目を整えるだけではなく、下地となるコンクリートを保護する役割もあります。
床材が薬品に耐えられず下地まで浸透すると、コンクリート自体が傷むことがあります。補修範囲が大きくなれば、塗床を塗り替えるだけでは済まなくなる場合もあります。
耐薬品塗床ならどんな薬品にも耐えられる?

耐薬品塗床を選ぶうえで一番注意したいのが、「耐薬品性」という言葉だけで判断しないことです。
同じ樹脂でも、薬品によって耐性は異なります。
酸とアルカリでも条件が違う
一口に酸といっても、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸など種類があります。アルカリも水酸化ナトリウムなど、使用する薬品によって条件は変わります。
さらに同じ薬品でも、濃度が違えば床材への影響も同じとは限りません。
「酸を使うから耐酸性の床」というところで止めず、実際に使用する薬品名まで確認することが必要です。
有機溶剤への耐性も製品ごとに異なる
シンナー類やアセトン、トルエン、キシレンなどの有機溶剤を使用する場合も、製品ごとの耐薬品データを確認します。
「エポキシだから大丈夫」「ビニルエステルだから大丈夫」という決め方はできません。
例えばエービーシー商会のビニルエステル樹脂系塗床材では、メーカーが公開している耐薬品試験でも、薬品ごとに判定結果が異なります。
つまり、耐薬品性の高い樹脂を選んだとしても、実際に使用する薬品との組み合わせを確認する必要があるということです。
参照URL:エービーシー商会「ケミコンダクトSV5000」
濃度によっても結果が変わる
同じ薬品でも、薄めた状態で使用する場合と高濃度で使用する場合では床への負担が変わります。
施工会社へ相談するときは、「酸を使用しています」だけではなく、薬品の商品名や成分、濃度が分かる資料を用意しておくと判断しやすくなります。
短時間の付着と長時間の接触は分けて考える
薬品が数滴こぼれてすぐに拭き取る場所と、薬品が床面にたまる可能性がある場所では条件が違います。
エービーシー商会では、エポキシ系で対応できない薬品や、高濃度・長期間の接触が想定される場合には、より耐薬品性を持つビニルエステル系などが選択肢になると説明しています。
タンク周辺や薬品保管場所のように、長時間接触する可能性がある場所では特に確認が必要です。
耐薬品塗床に使われる主な樹脂
耐薬品性を求める床には複数の材料があります。
ただし、樹脂の種類だけを見て決めるのではなく、各メーカーが公開している製品ごとの耐薬品性能まで確認することが前提です。
エポキシ樹脂系
エポキシ樹脂系は、工場や倉庫などで広く使われている塗床材の一つです。
硬い塗膜をつくりやすく、耐摩耗性や耐薬品性が求められる場所でも採用されています。
一般的な薬品に対応できる製品も多いため、製造工場などでは候補になりやすい材料です。
一方で、どの酸・アルカリ・溶剤にも耐えられるわけではありません。使用薬品と製品の耐薬品表を照らし合わせて判断します。
株式会社AIMでも工場の塗床工事でエポキシ樹脂を使用した施工実績があります。
参照URL:株式会社AIM「工場 エポキシ塗床工事」
水性硬質ウレタン系
食品工場や厨房などでは、水性硬質ウレタン系の塗床材が使われることがあります。
水や薬品だけでなく、熱水やスチームなどが加わる環境にも対応する製品があるのが特徴です。
例えばアトミクスの水性硬質ウレタン系「フロアガードU モルタル工法」は、耐酸・耐アルカリ性に加えて耐熱性や耐衝撃性を持つ製品として案内されています。
食品工場のように、洗浄薬品と熱水の両方を使用する場合は、耐薬品性だけでなく耐熱性まで含めて検討する必要があります。
参照URL:アトミクス「フロアガードU モルタル工法」
ビニルエステル樹脂系
高濃度の酸やアルカリ、有機溶剤などを扱う場所では、ビニルエステル樹脂系が選択肢になる場合があります。
エポキシ系では対応が難しい条件でも使用できる製品があり、化学工場や薬品を扱うエリア、防液堤などで採用されています。
ただし、ビニルエステル系だからすべての薬品に対応できるわけではありません。薬品の種類によっては適合しないものもあるため、耐薬品表による確認が必要です。
特殊な防食ライニングを使う場合もある
薬品への負荷が大きい現場では、一般的な塗床だけではなく、ガラスマットなどを組み合わせたライニング工法や防食材を使用する場合もあります。
特に薬品を貯蔵する場所や排水槽、薬品が長時間たまる可能性がある場所では、通常の作業床とは分けて考えます。
床面の用途が違えば、同じ工場内でも仕様を変えることがあります。
耐薬品塗床を選ぶ前に確認したいこと
塗床業者へ相談する前に、工場で使用している薬品や床の使い方を整理しておくと材料を選びやすくなります。
使用している薬品名
まず確認したいのが、実際に床へ付着する可能性がある薬品です。
「洗浄剤」「酸性薬品」といった大まかな情報だけでなく、可能であれば製品名や成分まで確認します。
安全データシートなどがあれば、施工会社へ共有すると選定の材料になります。
薬品の濃度
同じ薬品でも濃度によって床材への影響は変わります。
原液を使用するのか、水で希釈して使用するのかまで確認しておきます。
床に触れる時間
薬品が付着したらすぐに洗い流すのか、作業中にしばらく床へ残る可能性があるのかも重要です。
薬品を保管しているエリアでは、容器から漏れて長時間接触する可能性まで考えておきます。
使用時の温度
薬品だけを見るのではなく、床面にかかる温度も確認します。
特に食品工場では、薬品を使用した洗浄に加えて熱水やスチームを使用することがあります。この場合は、耐薬品性と耐熱性の両方が必要です。
床をどのように洗浄しているか
高圧洗浄機を使用するのか、ブラシで洗うのか、熱水を流すのかによって床への負荷は変わります。
使用薬品だけではなく、毎日の清掃方法まで施工会社へ伝えておくと、実際の使われ方に合った仕様を検討しやすくなります。
薬品を扱う工場の床は、材料名だけで選ぶことができません。株式会社AIMでは、使用する薬品や床の使用環境を確認し、メーカーの仕様や耐薬品データも踏まえて塗床工法をご提案します。
薬品以外の負荷も合わせて考える
薬品を使う工場だからといって、耐薬品性だけで床材を決めるのは避けたいところです。
実際の工場では、薬品に加えてフォークリフト、重量物、水、熱など複数の負荷が同時にかかります。
フォークリフトが走るなら耐摩耗性も必要
薬品への耐性が高くても、フォークリフトが頻繁に走る床で摩耗しやすければ長く使うことはできません。
走行頻度や旋回場所を確認し、耐摩耗性も含めて工法を検討します。
重量物や落下物があるなら耐衝撃性を見る
製造工場では、大型機械を設置したり、工具や部品が床へ落下したりすることがあります。
このような場所では、耐薬品性だけではなく耐衝撃性も必要です。
水を使うなら滑りにくさも確認する
洗浄後に床が濡れる場所では、防滑性も重要です。
ただし、表面を粗くすればするほど清掃しにくくなる場合もあります。現場で必要な滑りにくさと清掃性のバランスを考えます。
熱水やスチームを使うなら耐熱性を見る
床へ熱水を流す工場では、薬品への耐性だけで材料を決めることはできません。
株式会社AIMでも、食品工場や厨房など熱・水・洗浄の負荷がある環境では、水性硬質ウレタン系を含めて用途に合わせた塗床材を検討しています。
参照URL:
株式会社AIM「工場担当者向け 塗床のエポキシとウレタンの違い」
耐薬品塗床は実際に使う薬品と現場環境から選ぶ
薬品を扱う工場の床は、「耐薬品性あり」と書かれた材料を選ぶだけでは不十分です。
酸、アルカリ、有機溶剤などの種類、濃度、温度、床に触れる時間によって必要な性能は変わります。
さらに、フォークリフトの走行、重量物、熱水洗浄、防滑性なども一緒に確認しなければなりません。
特に重要なのは、樹脂の種類だけで決めないことです。同じエポキシ系やビニルエステル系でも製品ごとに耐薬品性能は異なるため、実際に使用している薬品とメーカーの耐薬品表を照らし合わせて判断します。
株式会社AIMでは、工場や倉庫、食品工場などの塗床工事に対応しています。現在使用している薬品や床の状態、作業環境を確認したうえで、現場に合った材料・工法をご提案します。
「今の床が薬品で変色している」「塗床が柔らかくなってきた」「どの樹脂を選べばいいか分からない」という場合も、現在の状況からご相談いただけます。

