その床、食中毒の原因に?調理場の衛生と安全を守る塗床工事の全知識 

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毎日の忙しい営業のなかで、ふと調理場の床に目をやったとき、小さなひび割れや塗料の剥がれが気になったことはありませんか。水たまりがなかなか乾かなかったり、油で足元が滑りやすくなっていたり。「昔からこうだから」「営業が忙しくて、なかなか床まで手が回らない」と、つい後回しにしてしまいがちな問題かもしれません。


しかし、その小さな劣化が、実は深刻な経営リスクのサインである可能性があります。


例えば、床のひび割れに水や食材カスが入り込むと、そこが細菌の温床となり、食中毒の原因になり得ます。もし食中毒が発生すれば、お客様の健康を損なうだけでなく、店の信頼は失墜し、最悪の場合は営業停止処分を受けることにもなりかねません。


また、濡れたり油で汚れたりした滑りやすい床は、従業員の転倒事故、つまり労働災害に直結します。大切なスタッフが怪我をすれば、人員不足で店を回せなくなるかもしれませんし、安全配慮義務を問われる可能性も出てきます。


保健所による立ち入り検査で、床の衛生状態の不備を指摘されるケースも少なくありません。調理場の床は、単なる作業スペースではなく、お店の「安全」と「信頼」を支える重要な基盤です。見て見ぬふリを続けることで、取り返しのつかない事態を招く前に、一度真剣に向き合ってみませんか。




■ 調理場の床問題を解決する塗床材の種類と特徴|メリット・デメリットを徹底比較

調理場の床を改修すると決めても、どんな材料があるのか分からない、という方も多いでしょう。ここでは、調理場によく使われる代表的な塗床材を3つご紹介します。それぞれの特徴を知り、ご自身の厨房環境に合ったものを選ぶ参考にしてください。



・エポキシ樹脂

エポキシ樹脂は、塗床材として非常にポピュラーな選択肢です。最大のメリットは、耐久性と耐薬品性に優れ、比較的コストを抑えられる点にあります。多様なカラーバリエーションがあり、光沢のある美しい仕上がりも魅力です。

一方で、熱に弱いというデメリットがあります。熱湯を頻繁に使う場所では、床が変質したり膨れたりする可能性があるため注意が必要です。また、衝撃で割れやすい性質もあるため、重量物の落下が想定される場所には向きません。乾燥に時間がかかるため、工期が長くなる傾向があります。



・硬質ウレタン樹脂

硬質ウレタン樹脂は、調理場のような過酷な環境に最も適した塗床材の一つです。最大のメリットは、その優れた耐熱性です。80℃〜120℃の熱湯にも耐えられるため、洗浄で高温のお湯を使う厨房でも安心です。また、エポキシ樹脂よりも柔軟性があり、衝撃に強いのも特徴です。

デメリットとしては、エポキシ樹脂に比べて費用が高くなる傾向があること、そして紫外線で変色しやすい点が挙げられます。屋内での使用が基本となります。



・MMA樹脂

MMA樹脂(メタクリル酸メチル樹脂)の最大のメリットは、圧倒的な硬化スピードです。施工後、わずか1〜2時間で硬化するため、営業を長時間止められない店舗や、夜間工事で翌朝には使用したいといった場合に最適です。低温環境でも硬化するため、冷蔵・冷凍庫内での施工も可能です。

デメリットは、他の樹脂に比べて費用が最も高価になることと、施工中に特有の強い臭いが発生する点です。周辺環境への配慮が必要になりますが、換気を徹底すれば臭いは数時間で収まります。




■ 「床工事は下地が9割」専門家が語る、塗床の耐久性を左右する“見えない部分”

高価で高性能な塗床材を選んだとしても、数年で膨れたり、剥がれたりといったトラブルが後を絶ちません。なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。実は、塗床工事の成否は、表面の仕上げ材ではなく、その下にある「下地処理」で9割が決まると言っても過言ではありません。


下地処理とは、古い塗膜や油汚れを徹底的に除去し、コンクリートの表面に細かな凹凸をつけて、新しい塗料がしっかりと食いつくようにする工程のことです。この工程をどれだけ丁寧に行うかが、塗床の寿命を直接左右します。


例えば、油汚れが少しでも残ったまま塗装すれば、油が壁となり、塗料はコンクリートに密着できません。結果として、そこから風船のように膨れてきてしまいます。また、コンクリートの水分量を見極めずに工事を進めると、内部からの湿気で塗膜が押し上げられ、早期に剥がれてしまう原因になります。


残念ながら、この最も重要な下地処理は、工事が終わってしまえば見えなくなる部分です。そのため、一部の業者ではコストと時間を削減するために、この工程を簡略化してしまうケースがあります。見積もりが極端に安い業者は、この下地処理の工程を省略している可能性も考えられます。


表面的な美しさや塗料の性能だけで判断するのではなく、見えない部分である下地処理の重要性を理解し、そこまで丁寧に説明してくれる専門家を見極めることが、長期的に見て満足のいく床工事を実現する最大の秘訣です。




■ 追加費用で予算オーバー?調理場の塗床業者選びでよくある3つの失敗パターン


「こんなはずではなかった…」と後悔しないために、調理場の塗床工事で実際に起こりがちな失敗パターンを知っておくことは非常に重要です。ここでは、特に注意すべき3つのケースとその回避策をご紹介します。



・①見積もりの安さだけで選び、すぐに剥がれて再工事になった

提示された見積もりが他社より明らかに安い場合、注意が必要です。その安さの裏には、先ほどお伝えした「下地処理」の工程が大幅に省略されている可能性があります。洗浄や研磨が不十分なまま塗装すれば、1年も経たずに床が剥がれ始め、結局、再工事のために倍以上の費用と手間がかかってしまうことがあります。回避策は、見積書の内訳をよく確認し、「下地処理」に関する項目が具体的に記載されているか、担当者にその重要性をどのように考えているか質問してみることです。



・②調理場の過酷な環境を理解していない業者に頼んでしまった

塗床工事と一括りに言っても、倉庫の床と調理場の床では求められる性能が全く異なります。調理場の環境を深く理解していない業者に依頼すると、耐熱性や耐油性が不十分な材料を選定され、すぐに床が劣化してしまうことがあります。熱湯で変色したり、油で滑りやすくなったりしては意味がありません。回避策として、その業者が過去に手掛けた調理場や食品工場の施工事例を見せてもらい、実績が豊富かどうかを確認することが有効です。



・③下地の傷みが激しく、後から追加費用を請求された

既存の床を剥がしてみたら、想定以上にコンクリート下地の傷みが激しかった、というケースは少なくありません。ひび割れや凹凸を補修するための追加費用が発生し、最終的な請求額が当初の見積もりを大幅に超えてしまうことがあります。優良な業者であれば、契約前に床の状態を細かく診断し、起こりうるリスクや追加費用の可能性について事前に説明してくれます。回避策は、現状の診断を丁寧に行い、複数の補修パターンを提案してくれる業者を選ぶことです。




■ 後悔しない業者の選び方|依頼前に確認すべき3つのチェックポイント


失敗を避け、長期的に安心できる調理場を手に入れるためには、信頼できるパートナーとしての専門業者を見極めることが不可欠です。価格だけでなく、以下の3つのポイントを必ず確認するようにしてください。



・1. 「下地処理から仕上げまで」一貫して自社で施工してくれるか?

業者によっては、下請けや孫請けに作業を丸投げしているケースがあります。これでは、品質管理の責任の所在が曖昧になり、万が一トラブルが起きても迅速な対応が期待できません。調査診断から最も重要な下地処理、そして最後の仕上げまで、全ての工程を責任もって自社の職人が行う体制が整っているかを確認しましょう。ワンストップで対応してくれる業者は、品質へのこだわりと責任感が違います。



・2. 現状の床を細かく診断し、最適な工法を複数提案してくれるか?

「この材料しか扱っていません」と一つの工法だけを勧めてくる業者は要注意です。本当にプロフェッショナルな業者は、まず現状の床の材質、劣化状況、厨房で使う水の温度や薬品の種類、営業を止められる期間などを細かくヒアリングし、診断します。その上で、予算や要望に合わせて複数の工法をメリット・デメリットと共に提案してくれます。選択肢を示し、最終的な判断をこちらに委ねてくれる姿勢が、信頼の証です。



・3. 食品工場や厨房など、衛生管理が厳しい場所での施工実績が豊富か?

調理場の床には、HACCPなどの厳しい衛生基準に対応できる専門知識と技術が求められます。一般的な塗装業者ではなく、食品工場や学校給食センター、レストランの厨房といった、衛生管理が特に重要な施設での施工実績が豊富な業者を選びましょう。実績の多さは、それだけ多くの現場で培われたノウハウと信頼の証明に他なりません。

床の耐久性をさらに高めたい、あるいは衛生レベルをもう一段階引き上げたい場合は、耐熱性や抗菌性に特化した塗床材や、床の寿命を根本から延ばすためのコンクリート下地改修といった、より高度な工事についても相談してみると良いでしょう。

詳しい施工内容は、専門業者の事業案内ページなどで確認できます。




■ まとめ:安全で衛生的な調理場は、信頼できるパートナー選びから始まる


今回は、調理場の床が抱えるリスクから、具体的な塗床材の種類、そして後悔しないための業者選びのポイントまでを解説しました。


床のひび割れや剥がれは、単なる見た目の問題ではありません。それは、食中毒や労働災害といった重大な経営リスクに直結する危険信号です。そして、その問題を根本的に解決し、長期的に安心できる床を手に入れるためには、目先の安さではなく、見えない部分である「下地処理」まで誠実に行う、信頼できる専門業者をパートナーに選ぶことが何よりも重要です。


この記事を読んで、「うちの床は大丈夫だろうか」と少しでも不安に感じたなら、まずは専門家に相談し、現状の床の状態を診断してもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。多くの専門業者は、無料診断や相談に応じてくれます。無理に契約を迫ることはせず、まずはお店の課題を一緒に考えてくれるはずです。


安全で衛生的な調理環境は、お客様への最高のサービス提供と、従業員が安心して働ける職場環境の実現に不可欠です。日々の業務に追われる中で見過ごされがちな「床」という土台を見直すことが、結果としてお店の未来を支える大きな一歩となるでしょう。


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